犬の噛み癖はよくある問題行動の一つですが、場合によっては人に怪我をさせるなどの深刻な問題へつながることがあります。
噛み癖を放置してしまうと改善が難しくなりますし、噛み癖が自然に治ることはほぼありません。
できるだけ早めに適切なしつけや対処をおこなうことが大切です。
【目次】
- 病気や怪我
病気や怪我で、体に違和感を感じている場合に、犬は噛むことがあります。
例えば、犬が足に痛みを感じている時に、人が足を触ろうとすると本気で噛みつく。犬の体調が悪く、精神的にイライラしていて噛みやすくなる、などがあります。
この場合は、痛みや不調の原因を取り除く必要があり、トレーニングをしても効果が無い可能性があります。
愛犬の体調に異変を感じる場合は、早めに獣医師の診断を受けましょう。
- ストレス・退屈・運動不足
ストレスが溜まっている場合、それを解消しようとして噛むことがあります。
家具や人を執拗に噛む場合は、ストレスが溜まっている可能性が高いです。
- 甘えて遊んでいる、かまって欲しい
遊んで欲しかったり、かまって欲しくて噛むことがあります。これは、特に子犬に多いです。飼い始めたばかりの子犬にじゃれて噛まれる場合は、遊んで欲しくて噛んでいる可能性が高いです。噛ませ続けていると、噛み癖がついてしまうので、早めにしつけをおこないましょう。早めにしつけをおこなえば、早く改善する可能性が高いです。
- 防衛本能・恐怖心
犬が自分の身を守るためや、恐怖心から噛むことがあります。この場合は、本気で噛むこともあり、放置すると危険ですし、犬の精神的にも良くありません。
恐怖心や不安が強い犬の場合、改善が難しく、しつけに時間がかかることがあります。飼い主が自己判断でしつけに失敗した結果、問題を悪化させるケースが多いです。人に怪我させてしまうような深刻な噛み癖がある場合は、恐怖心から噛んでいる可能性があります。自己判断せず、信頼できるプロのドッグトレーナーや獣医行動診療科認定医に相談しましょう。
- 誤った関わり方
愛犬との誤った関わり方をしているために、噛みを誘発している場合があります。この場合は、愛犬との関わり方を見直す必要があります。
- 周りの人に怪我をさせてしまう
人に怪我をさせてしまうと、トラブルに発展し、過失傷害などの犯罪の責任に問われたり、損害賠償を請求されることがあります。人を噛んだ場合だけではなく、他の犬に噛みついた場合も、犯罪の責任に問われる可能性があります。
令和4年度には、全国で4923件もの咬傷事故が起きており、死亡事故もあります。(犬による咬傷事故状況(全国計:昭和49年度~令和4年度)より)
- 周りのモノを壊してしまう
家具や壁などを壊されたり、飼い主の服や靴を破壊されることがあります。飼い主が困るだけではなく、犬が、破壊した物の破片を誤飲をしてしまうこともあり、危険です。
- 日頃のお手入れができない
ブラッシングや爪切り、シャンプーなど、必要なお手入れが十分にできなくなります。トリミングサロンで断られたり、追加料金を請求されることがあります。
お手入れが十分にできないと、衛生状態が悪くなり、皮膚疾患にかかる可能性が高くなりますし、爪が伸びすぎることで、犬が足を痛めることもあります。また、健康チェックがおろそかになることで、病気の早期発見が難しくなります。
やらなければいけないからと、無理やりお手入れをしていると、噛みがどんどん悪化していくことがあります。噛み癖が悪化すると、しつけに時間がかかったり、改善が難しくなるので、早めに信頼できるプロのドッグトレーナーに相談しましょう。
- ストレス・退屈・運動不足
ストレスを抱えていたり、退屈している、運動が足りていない場合は、おもちゃで遊んであげるなどして発散させてあげましょう。お散歩が十分でない場合もストレスが溜まります。できるだけ毎日お散歩に行きましょう。雨が降っている時は、犬の体調を崩す原因にもなるので、無理にお散歩に行く必要はありません。雨の日は、室内でのおもちゃ遊びの時間を増やすなどして、十分に発散させましょう。
犬の噛みたい欲求を満たしてあげるために、噛んでも良いおもちゃを用意しましょう。おもちゃにあまり興味を示さない犬には、コングにおやつを詰めて与えるのも効果的です。
- 甘えて遊んでいる、かまって欲しい
遊んで欲しかったり、かまって欲しくて噛む場合は、しっかりしつけをおこないましょう。この場合は、無視をするのが効果的です。「噛んでも要求が通らない」ことを学習すると、自然と噛まなくなってきます。
無視をする時に、しつこく噛まれてしまう場合は、静かに部屋を出ましょう。
噛まれた時に、叱っているつもりでも、叱り方によっては、「かまってもらえた!」と勘違いして、噛みが悪化することがあります。プロのドッグトレーナーの指導を受けていない場合は、叱らないことをおすすめします。
- 防衛本能・恐怖心
犬が怖がっていたり、不安から噛む場合は、叱らずに、おやつなどの「犬にとって良いイメージのあるご褒美」を使って改善を目指します。強い緊張がある場合は、おやつが食べられないこともあります。犬にとって嫌なことをしないことが大切です。
噛まれてお手入れができない場合などは、口輪を使うこともあります。口輪を使う時は、口輪に対して嫌なイメージをつけないように慣らす必要があります。
また、犬が深刻な精神状態の場合は、投薬治療をしながらトレーニングをおこなうこともあります。獣医師やドッグトレーナーとしっかり相談しながら、方針を決めていくことが大切です。
恐怖心が原因の噛み癖は、飼い主が愛犬と根気よく向き合っていく必要があります。改善には、数か月から、場合によっては1年以上かかることもあります。根気よくトレーニングを継続していくことが大切です。
噛み癖を放置したり、しつけに失敗すると、問題が悪化して改善が難しくなるので、早めに適切な対応をしましょう。
- 誤った関わり方
例えば、犬が寝ている時や、食事をしている時に触ると噛むことがあります。睡眠や食事は犬が生きるために必要なことなので、怒るのは当然です。犬が何かに集中している時は、噛まれやすいので、邪魔をしないようにしましょう。
もし、食べてはいけない物をくわえてしまった場合は、無理やり取りあげようとはせずに、おやつと交換で取り上げるようにしましょう。
また、人の手を使って遊んでいると、「手は噛んで遊んでも良いもの」と、誤って学習する可能性があります。犬と遊ぶ時は、おもちゃなど、犬が噛んでも良いものを使いましょう。
そして、興奮させ過ぎるような関わり方をしている場合、噛みを誘発してしまいます。特に、興奮しやすい性格の犬に対しては、遊びで興奮させ過ぎない、帰宅時に犬をワシャワシャ撫でないようにするなど、できるだけ興奮させないように注意しましょう。
犬の噛み癖を改善するには、愛犬の性格や噛む原因に合ったしつけをする必要があります。原因を見極めずに、インターネットなどの情報を鵜呑みにして、しつけをおこなうのは失敗しやすいです。
特に、犬が噛んだからと、叱ることで悪化させるケースが多いです。例えば、恐怖や不安で噛む犬の場合、叱ることでさらに恐怖を与えることになり、噛みが悪化することがあります。
叱ることがだめなわけではありませんが、叱るしつけは難易度の高いしつけ方法ですし、噛む原因によっては逆効果になります。プロのドッグトレーナーの指導を受けていない場合、誤った叱り方をしていることが非常に多いです。中には、プロの指導が誤っていることもあるので、叱るしつけをおこなう場合は、信頼できるドッグトレーナー選びも重要です。
叩く、蹴るといった、体罰を用いた叱り方は、愛犬との関係性を崩すことになるため、してはいけません。
【犬の噛み癖を治すタイミング】
犬の噛み癖を治すタイミングは、早ければ早いほど、改善する可能性が高くなります。特に、子犬の甘噛みは、噛み癖がつく前に適切なしつけをおこなうことで、噛まなくなる可能性が高いです。
成犬になって、噛み癖がついてしまった犬の場合は、改善に時間と根気が必要になります。トラウマがあるなど、深刻な症状の場合は完治が難しいこともありますが、根気よく向き合うことで、改善は可能ですので、できるだけ早めにプロの指導を受けましょう。
犬の噛み癖は、よくあるお悩みですが、犬が噛む原因は様々で、原因によっては、難易度の高いしつけになります。
インターネットなどの情報を元に、とりあえずしつけをして失敗してしまうと、犬の行動の修正が困難になります。
ですが、噛み癖を放置することは、人にとっても犬にとってもストレスになります。問題を放置せずに、飼い主が犬との関わり方を学び、しっかりと愛犬と向き合うことが大切です。